約半年前にお父様を亡くされたという山田さん(仮名)がご来所されました。
お母様は数年前すでに他界しており、山田さんは一人っ子だったために、今回山田さんが唯一の相続人ということでした。 たった一人の家族として山田さんは葬儀や納骨の手配をすべて一人で行いましたが、そのための費用はお父様が唯一残した80万円ほどの貯金から捻出したとのことでした。
ところが、半年ほどたったある日、ある消費者金融からの督促状が届き、その内容は、「お父様が生前に作った100万円以上もの借金を直ちに支払え」という驚くべきものでした。
生前に、お父様から何も聞かされていなかった山田さんは大変慌てて、藁にもすがる思いで弊所を訪問したとおっしゃっていました。
今回のような場合、家庭裁判所を通して相続放棄の手続きを行えば、相続人としての立場を失い、プラスの財産も、借金などのマイナスの財産も一切相続しないことになります。
しかし、相続放棄は「相続の開始があったことを知った日から3か月以内」に家庭裁判所に対して申し立てを行わなければなりません。
また、被相続人の残した相続財産を少しでも処分・費消してしまうと、それは相続を単純承認したものとみなされ、基本的には相続放棄の申立ては受理されなくなってしまうこともあります。
今回の山田さんのケースの問題点は、(1)すでに相続発生日から約半年が過ぎてしまっていること、(2)被相続人の財産の中から葬儀費用・納骨費用等を捻出してしまっていること、の2点でした。
まず、戸籍謄本・住民票等の必要書類を収集し、相続放棄申述書を作成し、続いて、家庭裁判所に提出する上申書を作成しました。
この上申書の中で、3か月以内に相続放棄の申述ができなかったやむを得ない事情、葬儀費用等に相続財産を使った事情・正確な金額等、をひとつひとつ報告していきました。
3か月を過ぎてしまった相続放棄、相続財産を何らかの事情で処分してしまった場合の相続放棄は、必ず認められるというものではありませんが、あきらめずに申立てを行ってみることが肝要です。
山田さんの相続放棄に関しては、裁判所からの問い合わせに対しても、その都度的確な回答を行い、無事相続放棄を行うことができました。