税務当局が相続財産への課税を一段と強化しようとしている。特に、他の税金に比べて申告漏れの多い相続税に関して、その前段階から個人財産を把握するための策を練っている。
すでに2年前から、国外に5000万円超の財産を持つ人を対象に、「国外財産調書」の提出が義務付けられているが、今年から、新たに「財産債務調書」という書類も義務付けられた。
対象は、前年の所得が2000万円を超え、前年末時点で財産を3億円以上持つ人。この2種類の調書を同時に提出する必要のある富裕層からは、なぜ必要なのかと問われ、困っている税理士も多いと聞く。
このように、国税庁が個人の財産把握に力を入れる狙いは、将来相続が起きたときの相続税の申告漏れを極力防ぎたいということは明白だ。相続財産の内、特に申告漏れが多いのは現預金で、その理由は、親が子供などの名義で口座を作り、実質的に自分で管理していた「名義預金」。
本来、子どもは相続財産として申告する必要があるが、実際には怠る人が多いため、国税庁は17年以降に「過少申告加算税」を強化する予定で、税務調査までに修正申告をしても5%の加算税を課されることになる。
(2016年1月13日 日経新聞より)
生命保険に関しても、18年から、申告漏れ防止の制度拡充があります。相続が発生した場合、年金、健康保険等の手続きの後、ほとんどの方が先に行うのが、生命保険の死亡保険金の受取のための手続きです。
現在、生命保険会社が死亡保険金を支払った場合、「支払調書」として税務署に提出することもあるので、死亡保険金に関しては、漏れていることはほとんどありません。
ただ、亡くなった人が契約者で他の人が被保険者となっている保険で、解約返戻金がでるものは、「死亡時における解約返戻金相当額」で申告する必要があるということは、そもそも課税対象になるということをほとんどの方が知りません。
そこで、契約者の変更情報をも「支払調書」の提出対象に含め、周知につなげようとしています。