二人の娘の母であるAさんは、平成元年5月に東山栄三さん(仮名)と再婚しました。
栄三さんには前妻(昭和53年8月死亡)との間に娘さんがいましたが、再婚の際にAさんの二人の娘達と養子縁組もしました。
その後二人の娘達も嫁ぎAさんも安堵の日々を夫とともに過ごしてきましたが、平成20年11月に栄三さんが83歳で病死したことから、遺産相続について相続手続支援センターに相談に来られました。
相続人は、Aさんと娘二人と、夫の実子で他家に嫁いでいる52歳の三喜子さん(仮名)の4人です。
財産は甲市の自宅の土地建物で、評価額は1,350万円(甲市の課税明細評価額1,250万円)と、金融資産で約3,000万円の合計4,350万円でした。
分割協議をする段階で、三喜子さんから「自宅の土地建物については自分が生まれ育った家であり愛着も強いことから、甲市の評価額の1,250万円を支払うので自分が相続したい」、また「分割協議書の作成と登記手続きについては、知り合いの司法書士に依頼します」と強い主張をしてきました。
Aさんも今後一人住まいの住宅にしては、広すぎることから、小さな1戸建て住宅を探して住みたいという気持ちと、これ以上相続のことについて揉めて煩わしくなるのは避けたいこともあり、彼女の主張を受け入れ相続手続きを終えました。
それから5年半も経過した今年の10月初めに、突然、三喜子さんの代理人の弁護士から、東山栄三さんが21年前に作成した自筆遺言書がありその内容は《長女三喜子に3,000万円の財産を相続させる》として記載があり、この遺言書に従い相続のやり直しを行いたいとの通知が届きました。
Aさんは、今更の事で納得できず誰に相談したらいいのか悩み、再度相続手続支援センターに信頼できる弁護士の紹介を依頼されたので、若手の信頼できる弁護士を紹介しました。
その結果判明したことは、本遺言書は家裁の検認も無く開封されており、先の父死亡後の相続時に三喜子さんは遺言を保有していたにも拘わらず、存在を示さずにいた事実を自ら供述されたとのことです。
今般の言い分は前回の相続時に入手した自宅の土地建物を1,400万円で買ってもらいたいこと、それが無理ならばその入手時に銀行から借り入れした500万円をいただきたいこと、その借入残金は今も250万円あることなどを主張しているとのことでありました。
分割協議での合意に対し、後日出てきた遺言書が優先するのならば、先にAさんが取得継承した財産の一部は、相手方へ返還することとなることもあり得ますが、相手の三喜子さんも先の相続時に遺言書の存在を協議の場に明示しなかったとの大きな落ち度もあることから、このまま長期にわたり揉めたり、拗れることも本意ではありませんので、Aさんも今後の生活のことも考え、相手の現在の借入の残金の250万円を支払うとの調停案で承諾し解決に至りました。