『数年間に妻が亡くなりまして…』とAさんが相談に来られました。
話を伺うと、ことの始まりは奥様の四十九日法要の日。Aさんと同居している二女Bさんが『そろそろお母さんの遺産分けのこと考えなくてはね。』と口火を切りました。その時、Aさんは奥様の通帳を持ってきて、みなに見せたそうです。
すると長女Cさんが、『お母さんは株も持っていたはずじゃないかしら?』と言ったので、AさんとBさんは曖昧な記憶のまま『そうだったね。』と言ってしまったそうです。
その日はそれだけで話は終わってしまったのですが、その後AさんとBさんは『はて?株なんてあったのかしら…』と考え、以前お付き合いのあった証券会社や信託銀行に株を持っていたのかを確認に行きました。
しかし、それらしい株は出てきませんし、半年たっても配当金の通知書も議決権行使の通知も届きませんでした。AさんとBさんはやっぱり株はなかったに違いないと確信を持ち、Cさんにそのことを伝え、遺産分割をしようと持ちかけたのですが、CさんはAさん、Bさんが共謀して遺産を隠していると思い込んでしまったようです。
その後も法事などで顔を見ることがあっても、あいさつはしても、それ以降、遺産の話は全くすることがないまま3年の月日が経過しました。
そんな折、Aさんに癌が見つかり、大手術をすることになりました。Aさんは相続税対策のためになればと思い、自分よりもきっと長生きするであろう奥様の通帳にAさんの預貯金を預けていました。そのため、治療費をご自身の通帳から捻出することが出来ず将来の生活を考えると不安になってしまったとのことです。
相談員はお話をお聞きし、2年ほど遺産分割についてお話合いをしていないのであれば、まずは相続人全員に遺産分割協議をしようと持ちかけてみましょうと提案をしました。
するとAさんは、Cさん以外の相続人のみなさんの意向は法定相続分で相続することで意見は一致しているとのことでしたので、もう一度Cさんに遺産分割協議をしようと持ちかけてみて、音沙汰なしであれば、まずはAさんの治療費や、生活費の不安を取り除くべく法定相続分での払い出しを試みてみましょうとさらに提案しました。
早速もう一度財産調査をやり直し、同時進行でAさんからCさんに対して遺産分割をしようと持ちかけてもらいましが、案の定、全く返答がありません。
その間に相談員は各銀行と綿密な打ち合わせをし、Cさんを除く相続人3人分の法定相続分の払い出しに必要な書類等を提出。
そこから先は、どの銀行もおよそ1か月から2か月の間にCさんに連絡をとり、『Cさん以外の相続人から法定相続分で支払いをしてほしいとの依頼がきているが、あなたはどうしますか?一緒に手続をしますか?』との確認を取ります。また、全く連絡が取れない場合には一定の期間をおいて法定相続分での払い出しに応じるとの確約をもらい、Cさん以外の相続人さんに署名捺印いただき、銀行に提出。
この間にAさんは入院、手術をしましたが、強い生命力で生き抜き、こんな思いはもう子供たちにさせたくないとお話しをされていたので、遺言書の作成もお手伝いさせていただきました。
その後2か月たってまとまった資金がAさんらの手元に届き、安心した生活を取り戻すことができました。