「亡くなった夫Tさんの相続で、通帳などが全く見つからず、どうしたら良いか分からない」と、妻のAさんから相続手続きの依頼を受けました。
話を詳しく聞いてみると、Tさんは通帳などをすべて管理していたようで、相続人であるAさんをはじめ、3人のお子様たちもどこに預金があるか全くわからない状況でした。貸金庫を借りていたので、その中にあるかもしれないということで、まずは貸金庫の中を確認することから始めました。
中から出てきたのは、M銀行、Y銀行、U銀行、R銀行等複数の通帳でした。それぞれの銀行に普通預金や定期預金を有していることが確認でき、さっそく手続きの準備を進めていたのですが、出てきた通帳のU銀行の預金が定期預金でなく「特約付き金銭信託」だったのです。
Tさんは亡くなった時に妻Aさんが一時金を受け取るよう契約をしていたのですが、家族用の信託をしていることを相続人の誰もが知りませんでした。Aさんは、どのように手続きをしたら良いのか戸惑っておられました。
U銀行には、金銭信託の他に普通預金もあり、通常の預金解約と同じように相続手続依頼書に普通預金や信託の詳細を記入し、相続人全員で署名押印したものを提出すれば良いと考えていました。しかし、信託の手続きには順序があり、U銀行の場合はまず信託の手続きを行ってから、通常の普通預金の解約をしなければいけないとのことでした。
手続きの方法は、U銀行からご自宅に「お受け取りに関する確認書」が送付され、そこに受取指定のAさんが署名、実印押印を行うだけです。署名押印した確認書に加え、死亡記載の戸籍・Aさんの印鑑証明書・信託の通帳を返信用封筒で返送すると、信託による一時金受取の手続きは1週間もかからずに完了しました。その後普通預金解約の相続手続依頼書が送付され、通常通り預金の払い戻し手続きも無事完了しました。
Aさんは、亡きTさんがAさんのために金銭信託をしておられたことに驚かれていたと同時に、大変喜んでおられました。
「信託」の手続きが簡単でスムーズに行えることを知り、勉強になりました。最近では家族信託なども話題になっていますが、今後「信託」をされている依頼者の手続きも増えてくると予想されます。手続きの手順や知識を身につけておく必要があると感じさせられた案件でした。