「相続人は私一人だけなので、この度亡くなった母(山田花子)の相続の手続きをお願いしたい」という山田三郎さんの相談から、幕を開けました。
山田三郎さんは当初、相続人は自分一人だけなので、特に問題も無くスムーズに事が進むだろうと思っていました。しかし、戸籍を取ってみて、山田三郎さんは山田花子さんと戸籍上の親子関係になく、相続人ではないということ、また相続人としては総勢21名にも及ぶことが明らかになりました。
後に分かったことなのですが、実は、亡山田太郎(父)さんと愛人との間に生まれたのが山田三郎であり、山田花子さんは山田三郎さんが物心つく前から本当の子供として育て、ごくごく普通の生活を送っていたそうです。
報告時、山田三郎さんは驚きと同時に諦めの表情がうかがえましたが、「がんばって手続きを進めていこうよ、お父さん」という妻のまさかの一言により、これからどんな困難が待ち受けているのかもしれない手続きを進めて行く決断をしました。
それ以後、山田三郎さん夫婦は、2ヶ月掛けて関西から関東までの相続人の家を一軒一軒、手土産を持って事情を説明し、手続き協力のお願いをするため訪問したのでした。
通常、相続人が多数いる場合、話し合いが付かず遺産分割協議がまとまることは稀ですが、奇跡と言うべきか、この度の事情を酌んだ相続人全員が手続きに協力し、且つ預貯金の解約手続き後、解約金全てを代表相続人の方から山田三郎さんに手渡しされたのでした。
6ヶ月間かけて全ての手続きのサポートを終えた私を、山田三郎さん夫婦が笑顔満面で見送っていただき、何とも言えないすがすがしい気分の中、幕を閉じました。
「決して諦めてはいけない」「努力と熱意は必ず実を結ぶ」こと、そして特に「妻は勇敢である」ことを教わった案件でした。
注)登場人物名は全て架空のものです。