「母が自宅で転んで骨折してから、最近気が弱くなったのか、自宅に送られてくる当センター発行の相続情報誌をみて、「娘の私に『遺言をしておきたいので、相続手続支援センターに行って遺言の相談をしてくるように』と母から頼まれた」と無料相談に来られました。
相続人予定者は長女、長男の二人。相談者の娘さんは「母は長男である息子と連絡が取れず、今息子がどこに住んでいるか判らないので、私が元気な間に遺言を作っておきたいと言っている」とお母さんの今の気持ちを代弁されました。 いろいろ話をされた後、「一度帰って母に今日聞いた事を報告します」と、その場の娘さんとの無料相談は終わりました。
それから数日後、娘さんからお母様の自宅訪問の電話依頼がありました。
ご自宅に伺い、ベッドに横たわっているご本人とお話をしました。『いつもあなたのところから送ってくれる情報誌は、私のような年寄りにもわかりやすく書かれているので、毎号欠かさずに読んでいます。それで私もそろそろ遺言を書かなければ・・・と思っているうちにこんな身体になってしまって・・・。
今日はこんなところまで来ていただいてありがとうございました。ご迷惑をおかけしますが、何とか私の遺言ができるようにお手伝いをして下さい』と、センターの相談員に遺言の手伝いを懇願されました。
遺言動機は、長男である息子さんの居場所がわからず行方知れずの状態にあり、このままでは相続手続の時に娘が苦労するのが可哀相で、遺言を作っておきたいと思われたそうです。
相談員は「遺言を作る前に、本当に長男が行方不明なのかをまず調べる事が必要です」と、お母様の了解を得て、長男の戸籍の附票を粘り強くさかのぼる調査を行い、現在息子さんが住んでいると思われる住民票の住所地までたどりつきました。後からお聞きすると、息子さんは、転勤族で全国を渡り歩く生活が続き、いつの間にか住んでいるところを親に伝えなくなってしまっただけで、自分が行方不明であると聞かされてびっくりされたとの事でした。
今回、遺言者であるお母様は長男の無事が分かり、遺言相談から思わぬ親子、姉弟の現況が確認しあえたことを大変喜んで頂きました。もちろん遺言公正証書も作成されました。
但し、遺言の内容は当初長男が行方不明?だった時とは相当変わった内容になりました。
それを知っているのは、遺言者であるお母様とお手伝いをしたセンターの相談員だけです。