「不動産の名義変更ができていなかったみたいなのです」と、お母様の相続手続きのお手伝いをさせていただいたAさんから電話がありました。
Aさんに詳しくお話を伺うと、どうやら、18年前に亡くなったお父さんの山林の名義が変わっていないようでした。その土地は
(1)お父様の所有している持分も少なく
(2)山林であったために固定資産税の請求書も届いていなかったこと
(3)生前にお父様からすでに売却したと聞いていたこと
(4)権利書が自宅に保管されていなかったこと
から、Aさんはお父様が生前に処分したものと思っていたようです。
このたび、Aさんのもとにお父様の友人から電話があり、該当の不動産を買いたい方がいるので、早急に名義変更してほしいと言われたそうです。
Aさんと相談員は、18年前の遺産分割協議書を家中の重要書類の中から探しました。
すると、当時の相続税申告書が出てきました。期待に胸を膨らませて中をみると、遺産分割協議書が出てきました。喜び勇んで実印の押印してあるページを見ると・・・。残念ながらコピーでした。
ただ、遺産分割協議書の中には、「この遺産分割協議書に記載のない財産はAさんが受取るものとする」との記載がありました。その場で司法書士の先生に連絡をとり、何とか遺産分割協議書のコピーで登記をすることができないものかと相談をしましたが、やはり、原本でないと名義変更ができません。
解決方法として、前回の遺産分割協議書と抵触しない同様の内容で、該当不動産の部分のみの遺産分割協議書を再度作成することにしました。
Aさんから他のご相続人へ連絡し、事の次第を説明し、遺産分割協議書に署名、押印をいただくことができました。そしてなんとか数週間で、不動産の名義変更を無事完了しました。
その後、Aさんは不動産を売却し、ホッとしたとおっしゃっていました。そして大切な書類はまとめておかなければいけないね・・・と苦笑い。
Aさんはご相続人全員と仲が良く、再度遺産分割協議書を作成することができましたが、不仲だったら・・・、相続人が認知症になっていたら・・・到底名義変更はできなかったでしょう。
相談員は、「被相続人の財産について、100パーセント知っている相続人はいません。被相続人すら覚えていない財産もあります。何年経っても、今回のように名義変更のできていない財産が出てくる可能性を考え、遺産分割協議書の原本は必ず大切に保管してください」とAさんのようにお困りの方が一人でも少なくなるようにと考え、すべてのお客様にしっかりとお伝えするようになりました。
【遺産分割協議の事例紹介】
事例1:財産ごとに遺産分割協議書をつくる
事例2:遺産分割協議書は大切に保管しましょう
事例3:故人名義の多数の通帳と残高