金融機関が「この方(口座の名義人)は認知症かな」と判断すると、口座が凍結してお金を引き出せなくなることをご存知ですか。
死亡が分かった時は全ての取引が凍結しますが、認知症の場合は出金・解約・契約の変更ができなくなるものの、自動引き落としは継続され、振り込みや入金も可能です。つまりご本人が不利益を被るかもしれない取引だけストップします。
その口座から出金しなければならない場合は、家庭裁判所に申し出て、成年後見人を選任してもらわなければなりません。実際、成年後見人の選任の申立てをする動機の断トツトップが「預貯金などの管理・解約」となっていますので、引き出せなくなって困ってしまうご家族の多いことがわかります。
ところが、成年後見人は一度選任されると、ご本人の認知機能が回復するか、亡くなるまで任務が続くため、成年後見人に対して毎月2~5万円の報酬を払い続けることになります。ご家族にとっては不便な制度のため、「成年後見人でなければ預金を引き出せない」と断る金融機関に対して苦情が増えているようです。
そこで、一部の大手銀行では、「代理人指名手続」という制度を始めています(金融機関ごとに名称が異なります)。本人の判断能力があるうちに、代理人を指名しておくことで、認知症の発覚後も代理人が窓口で出金できるという制度です。
ご自身が、あるいは親御さんが「認知症になったらどうしよう」と不安を抱えていらっしゃる方は、取引先の金融機関にこのような制度があるかを確認してみてはいかがでしょうか。