遺産分けを巡って遺族同士が争う「争族」が絶えない。
争いになって家庭裁判所に持ち込まれた件数は、2015年に1万5000件で、10年前より25%も増えている。
争族を避けるには、遺産の配分を具体的に書き残す遺言が大切になる。
遺言には、「自筆証書遺言」(開封時に家裁で検認手続が必要)と、「公正証書遺言」があり、2015年、前者は約1万7000件、後者は同11万8000件弱で、両者合わせても年間死亡者数の1割ほどにとどまる。
遺言で大切なのは、
(1)誰に何をどれだけ相続させるのかをはっきりさせること
(2)民法で定められた「遺留分」(法定相続人の最低限の権利)への配慮
(3)生前贈与や寄与分の加味など。
また、後で遺産が発見されてもめるのを避けるために「その他一切の財産を〇○に相続させる」などと書いておくことや、遺言に書かれたとおり手続きをする「遺言執行者」を指定しておくことも重要といえる。
(平成29年3月18日 日本経済新聞より抜粋)
公正証書の遺言を作成する人が、約12万人にもなりました。
一昔前から比べると、劇的な増加です。
遺言のセミナーなども各地で開かれ、私たちのセンターも数えきれないほどやってきました。少しは遺言の必要性を広める啓蒙活動に役立っているのではないかと思います。
私が個人的にお勧めする遺言の内容は、後を継ぐ人に、「家の維持費」をきちんと配分して大目に渡しておくことです。
維持費と言っても、固定資産税などではありません。
毎年のお墓参りや法事、親戚の結婚式など、冠婚葬祭や近所づきあいに必要となる費用を渡しておくことです。
実家に帰省する兄弟姉妹の家族全員分の、交通費や宿泊代などは「維持費」から出す。
そうすると、お墓参りにも親戚全員が来ることができます。
遠方からの移動には、結構なお金がかかるので行きたくても行けないという事情が多くあります。
自分のお墓参りに来てもらう費用を、家を継ぐ長男などにきちんと分けてから、それぞれの子供たちが自由に使えるお金を相続させるという順番を間違ってはいけません。
だって、自分のお金ですもんね。
亡くなってからも、遺産を有意義に使ってもらうように、兄弟姉妹、親戚みんなが仲良くできるように、コミュニケーションをとる「交際費」が大事です。
兄弟仲が良くなる秘訣は、やはりどれだけ会ったかという回数に比例しますので。
(米田貴虎)