証人立会いの下、公証人が作成する「遺言公正証書」の作成件数が増えている。遺言公正証書は、遺言者が話した内容を、証人2人の立会いの下、公証人が筆記して作成する遺言である。
遺言者が自分で書く「自筆遺言」よりも確実な文書として扱われる。課税対象者を広げる改正相続税法が2015年1月に施行され、遺産分割で親族同士がもめる「争族」を防ぐ手段として注目を集める。証書作成は、2014年に初めて10万件を突破し、今年はさらに上回る見通しだ。
遺言公正証書を作る人が増えているのは、高齢者が増え続けていることに加え、相続税の基礎控除額が従来の6割になったことも要因となっている。
遺言が無ければ、遺産は民法が定める法定相続人全員による分割協議で分ける。遺産分割の争いも増加傾向にあり、全国の家庭裁判所が受け付けた遺産分割に関する審判・調停事件は過去10年で3割も増加している。
日公連の坂井文雄広報委員長は、「親族間のトラブルを防ぎ、確実に遺産分割する方法として遺言公正証書が知られてきた」とみている。
(2015年12月31日 日本経済新聞より)
遺言公正証書は、作成時に遺産額に応じて手数料がかかります。しかし、遺言公正証書は公証人が作成する公文書のため、相続の手続きの際、遺言者の意思の通りにスムーズに手続きをすることが可能になります。その上、遺言書があった場合にしなければならない家庭裁判所で行う検認手続きも不要となり、すぐに使うことができます。
それに対して自筆遺言は、作成に費用はかかりませんが、開封する前に必ず家庭裁判所で検認手続きをしなければなりません。さらに各手続き先で自筆証書を使用する場合、内容に不備があり無効となる場合や金融機関によっては、相続人全員の同意がないと遺言書が使えないこともあり、せっかく作成した遺言書が使えず、遺言者の意思が反映されないといったことも散見されます。その際は相続人全員での分割協議で分けることとなり、「争族」、もめる原因となることがあります。
遺言者の意思を反映させる、手続きをスムーズに行うために、遺言公正証書の作成をおススメします。費用はかかりますが、自筆遺言と比べても、一番確実な方法と言えます。自筆遺言は、費用はかかりませんが、証人がいないために「誰かが書かせたのではないか」「遺言者はそんなこと考えていなかったはず」「手続きでは使用できず、相続人で話し合うことになった」などと、家族から様々な意見が出たり、もめてしまうこともあります。
元気なうちに遺言公正証書を作っておくことが、「争族」を防ぐ有効な手段であると思います。