改正相続法 思わぬ課税も ~遺産争いや配偶者居住権~

相続法が7月に大きく変わったのに伴い、相続の際の税金の取り扱いにいくつか変更があった。よく理解しないまま制度を使うと思わぬ税負担が発生しかねない。

税金の取り扱いで、まず注意したいのが「遺留分」についてだ。
7月の法改正で変わったのは、遺留分に満たない分について現金で請求することができることになった点だ。
しかし、請求された側の手元に現預金がない場合、不動産などで弁済する「代物弁済」という方法があり、改正前と同様に、不動産を共有する点だ。
遺留分を満たすために遺産を共有にすると譲渡税がかかる場合がある。
遺留分紛争の解決は現金に一本化されたため、不動産を共有すると実際は売っていなくても税制上は売ったとみなされるという理屈だ。

もう一つ、改正法の目玉2020年4月に創設される「配偶者居住権」だ。
居住権には財産価値があるとされるため、夫が亡くなり妻が相続した時点で相続税の課税対象となる。
次に、居住権を持つ妻が亡くなると、居住権自体も消滅するのが改正法の考え方。
つまり、子に居住権の相続税負担は生じない。
注意したいのは、生前に妻が居住権を放棄したり、妻と子が合意の上で居住権を解除したりするケースだ。
その場合は、妻から子に贈与があったとみなされ、子に贈与税が課税される。
配偶者居住権は老人ホームに入居するなどして、自宅に居住しなくなったとしても持ち続けられる。居住権を子が相続する際には、相続税がかからないのだから、妻が持ち続けていれば避けられた税負担だといえる。
改正相続法によって、従来の知識や常識が通用しない税の落とし穴が増えた。
(令和元年9月21日 日本経済新聞より抜粋)

法改正によって、課税も変わってきます。
遺留分については、原則現金での支払いとなったため、不動産を共有にしたら逆に譲渡税がかかる可能性が出てきました。
実務での運用はまだなので、今後はっきりとしてくると思いますので、詳細が分かり次第またご報告します。
それにしても、これまではかからなかった税金がかかるのは、少し納得がいかないですね。
また、配偶者居住権も、権利を放棄した時の課税関係は、法律ができた時から議論されていました。運用はもう少し先ですが、所有権を持った子供が得をすることになるので、課税されるのでしょうね。
申告方法など、まだ不明瞭な点がありますがこの点も分かり次第お伝えしたいと思います。
(米田貴虎)