被相続人である父Tさんを亡くされたKさん(二男)が、相談に来られました。
話をお聞きすると、「父が8年前に亡くなったのですが、手続きは何もできていません。自宅の名義と銀行預金がそのままになっています」とのことでした。
相続人はTさんの妻とKさんを含め子供5人の合計6人でした。
Kさんによると、
「実は亡くなった父は生まれて15歳までは中国国籍、15歳から52歳までは台湾国籍、52歳から亡くなるまでは日本国籍でした。
また、長男は生まれは台湾ですが、今はアメリカ国籍です。三男は帰化して日本国籍ですが、障害があり後見人がついています。
自分だけで手続きができないか銀行に確認しに行ったのですが、書類を揃えないと手続きできないと言われました」
とのことでした。
8年も手続きが出来ていなかったのは、このような複雑な事情があり、書類収集に行き詰っていたからです。やるべきことは、
①父Tさんの戸籍収集(日本戸籍、台湾戸籍、中国戸籍)をして相続人を確定させる
②三男の後見人に話をして協力を得る
③アメリカ国籍の長男に押印していただく方法(ノータリーパブリックというアメリカの公証人の前で書類に署名し認証してもらう)を説明して手配してもらうこと
でした。
藁にもすがる思いで相談に来られたKさんの依頼を受け、手続きを進めることになりました。
台湾戸籍を取得するには、台湾戸籍の取り寄せや翻訳、台湾代表処(所在地:大阪)における認証作業など多岐にわたる申請が必要となりました。
かなり時間がかかりましたが、無事に出生から死亡までの戸籍収集が完了し、相続人が確定しました。
戸籍収集は複雑でしたが、遺産分割協議はスムーズにまとまりました。
残されたお母様がすべて相続し、後見人がついている三男に代償金として法定相続分を支払う内容で相続人全員が同じ意見でした。
その内容で遺産分割協議証明書を作成し、アメリカ国籍の長男には英訳と日本語の両方を送り、ノータリーパブリックの前で署名押印し認証してもらいました。
三男の後見人にも協力してもらい、全員の署名押印書類を揃えることが出来ました。
書類さえ揃えれば、銀行解約・不動産の名義変更は問題なく手続きでき、無事に完了しました。
複雑な戸籍収集も相続の専門家に依頼することでスムーズに進めることができます。