被相続人Aさんの兄であるBさんからのご相談。
Aさんは20年ほど前にご主人に先立たれ、一人息子も昨年急逝し、ご自身も今年癌により亡くなった。相続人は、AさんBさんお二人の母であるCさん一人とのこと。
CさんはBさんと同居されており、現在102歳で頭はしっかりしているが、大変なので手続一切をセンターに任せたいと来訪された。
Cさんは102歳という高齢にもかかわらず、大変しっかりしたお話をされ、「助かります」と何度も言っていただきお手伝いをすることとなった。
不動産はAさんの住んでいたご自宅だけということで、登記簿を取り寄せたところ、Aさんと一人息子の共有のままであることがわかった。Bさんにその旨連絡をすると、一人息子が急逝した当時Aさんはすでに闘病していたとのことで、多分相続の手続きなどはできなかったのではないかとのこと。ということであれば、他にも一人息子名義の通帳などがある可能性が高いので、私はBさんに探してもらうようにお願いし、一人息子名義の通帳が3冊見つかったとお預けいただいた。
それぞれの銀行口座の解約手続きを始めたところ、U銀行では一人息子名義の口座はすでに解約が完了しているとのこと。しかし、私が手にしている通帳は、記帳こそ1年余りされていないが、そのまま生きた通帳の体をなしている。
その旨U銀行担当者に伝えたところ、その当時の唯一の相続人であるAさんが通帳紛失扱いで相続手続きを終えていた。また他の2行も同じ手続きがされていたことが分かった。Aさんは気丈にも、闘病の合間に金融機関の相続手続きを終え、不動産の名義変更だけ残してしまったらしい。
そしてここで問題になるのが、この一見生きたままになっている3冊の通帳である。これらの通帳がこのまま仕舞い込まれ、後々事情を知らない人が見つけ、また手続しようとする可能性も出てくる。
そう考えるとこれらの通帳にその旨何らかの記載をしてもらったほうがよいと思い、問い合わせたところ、それぞれ対応が違うことが分かった。
U銀行、R銀行はその通帳を窓口に持っていけば、その場で調べ確認の後解約印を押してくれるとのこと。但し、解約日などは記述されない。一方、M銀行は、本来無くなっているものなので、解約日の取引履歴を取ってもらうしかないというのが回答だった。私は事情を説明して粘ったところ、その担当者は残金をいつAさんのどこの口座に振り込みをしたかをこっそり教えてくれた。そしてAさんの通帳を調べると確かにその日にAさんの名前で同額が振り込まれている記帳を確認できた。
後日この3冊の通帳に関しての経緯をお伝えしたところ、「きちっとした子だったから、ちゃんとしたかったのだろうね」と涙ぐまれたCさんの姿が今でも私の心に残っている。