【相続事例集】金融機関ごとの対応の差

前山様(仮名)は、お父様が亡くなり相談に来られました。前山様は亡くなられたお父様とは疎遠で、さらに亡きお父様は自筆遺言書を残しており、内容は「相続人でない親族に全て遺贈する」というものでした。

前山様は遺留分の減殺請求をするかどうか迷っており、受遺者である親族からの通知で財産は預金のみ、金融機関は4か所(A銀行,B銀行,C信用組合,D信用組合)あることしか分かっていませんでした。資料には詳しい金額や内容は書かれていなかったので、弁護士が残高証明書と過去5年分の取引履歴を取得することになりました。

神戸にあるA銀行、B銀行、C信用組合は、弁護士が請求を行い、すぐに書類を確認することができました。しかし、D信用組合では一切応じられませんという回答でした。

弁護士による任意の開示請求は、拒否され、最高裁判例により開示が認められるはずであると説明しましたが,これもまた拒否されました。弁護士法に基づく弁護士会照会実施についても回答拒否とのことで、相続人からの請求であっても応じられないとの事でした。

その理由は,(適正と見える)自筆遺言書により既に相続処理は完了しており,自行の法務部と協議したが,D信用組合の手続き上開示は出来ないからとのことで、「今の所、遺言無効等の裁判などをする中で改めて請求するしか方法がない」との結論でした。

結果として、他の3金融機関にはほとんど預金がなかったため、前山様は遺留分減殺請求をされませんでした。

残高証明書や取引履歴の取得は、各金融機関によって方法が異なります。例えば、相続人全員で請求が必要な銀行もあれば、相続人単独で請求できるところもあります。

金融機関ごとの対応が異なるので、それぞれに応じた対応が必要です。

 

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