藤田さん(仮名)の旦那様は、仕事上の事故でお亡くなりになられました。あまりに突然のことで呆然とされていましたが、親戚の方の強い進めもあり、これからすべきことを相談に来られました。
診断の結果、会社関係の諸手続から、相続税の申告まで多岐にわたる手続をしなければならないことが分かり、とても一人ですべての手続をすることが出来ないと、お手伝いすることになりました。
事務的な手続はスムーズに進んだのですが、初めからひとつの懸案事項がありました。それは、自宅の隣にある他人の土地の固定資産税を30年以上もの間、藤田さんの家族が払い続けていたのです。
所有者を調べてみると、自宅から電車で8時間以上はかかる他府県に住んでおられる吉岡さん(仮名)であることが分かりました。弁護士・税理士・司法書士等の専門家と検討に検討を重ねた結果、藤田さんにとって一番金銭的にも心理的にも負担が少ない方法が時効取得ではないかという結論に達しました。
しかし、時効取得というのは普通裁判所で判決をもらうというのが通例ですが、吉岡さんの同意があれば簡単な書類だけで済むのです。数日後、藤田さんと一緒に吉岡さんのご自宅を訪ね、事の次第を説明しました。
すると吉岡さんはいろいろとこれまでの経緯をお話してくれました。実は何十年も前に吉岡さんの伯父様の龍之介様(仮名)が事業で失敗をされ、その時に藤田さんの旦那様のお祖父さんの菊松様(仮名)が、購入されたそうです。しかし、その土地は龍之介様の所有ではなく、吉岡様からすると、勝手に伯父様が本来は龍之介様のものではない土地を売ってしまったことになります。
これまでもいろいろの龍之介様がしてこられた後始末を吉岡様はしてこられたようで、本当にお困りになっていました。時効取得の話をさせて頂いたときにも、「身内の後片付けをするのが私の使命です。」と言われ、快く手続にご協力していただけました。
こうして、本来他人である吉岡様の土地が、藤田様のものになったのです。
これも、本来ならば知らん顔をされても仕方が無い吉岡様の義理人情がなければ成り立たなかったことだと思います。藤田様も「専門家がたくさん揃っているセンターに頼んでよかったです」と、とても喜んでくださいました。何度も会議を行った専門家一同としてもとてもうれしいお言葉でした。