相談者Hさんは、お母様を亡くされ、センターに相談にみえました。Hさんは、すでに、お父様もお姉さまも亡くしておられ、お母様の相続人は、Hさん、お姉様のお子様2人の計3人です。Hさんは、「姉の子どもは2人とも東京在住で、経済的に余裕がある」とおっしゃっていました。
Hさんは、お母様の遺品を整理していると、お母様によって残されたと思われる、複数の遺言を発見しました。これらの遺言は、封をされておらず、コピー用紙にメモ書きされたかのような体裁でした。
遺言には、不動産(約3,000万円相当)をHさんの姉に、その他の預金(4,000万円相当)をHさんとお姉さんで2,000万円ずつ相続させると書かれていました。
『この遺言に法的な効果があるのか?』こう思いつつも、Hさんは、遺言の検認という手続きを裁判所で行いました。
裁判所から、Hさんはこう言われました。
「確かに遺言の存在を認める、ただし、法的にこれが有効か無効かを判断するものではない」
Hさんは、遺言の法律的効果云々を議論する前に、相続人全員で話し合おうと、姉の子である姪2人と3人で集まる機会をもうけました。
話し合いの結果、次のようにまとまりました。
・Hさんが、不動産(約3,000万円相当)を相続する。
・姪二人が預金の内、不動産の価格に相当する3,000万円を相続し、1,500万円ずつ分ける。
・Hさんが、預金の内、1,000万円を相続する。
姪2人は結婚していて、他県で夫の所有する家に暮らしています。実家に帰ってくるつもりはなく、経済的にも余裕があるとの事から、Hさんが不動産を相続することになりました。
遺言とは全然ちがう内容ですが、相続人全員の合意がとれ、Hさんは、遺産分割協議によって、自分の住む不動産を相続できました。