夫婦別姓訴訟

夫婦別姓を禁じた民法規定をめぐり、最高裁大法廷が16日に言い渡した判決の要旨は次の通り。

多数意見では、夫婦や子供が同じ姓を名乗ることには合理性がある。どちらの姓を名乗るかは夫婦の協議に委ねられており、民法の規定に男女間の形式的な不平等は存在せず、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。夫婦が同じ姓を名乗る制度は日本社会に定着している。

家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ、その呼称を一つにするのは合理的だ。

一方、結婚して姓を定めた人がアイデンティティーの喪失感を抱いたり、社会的信用や評価の維持が困難になったりするなどの不利益を受けることは否定できない。夫の姓を選ぶ夫婦が圧倒的多数を占める現状では、妻となる女性が不利益を受ける場合が多いとみられる。

あえて結婚しない選択をする人もいる。しかし現在の制度が旧姓を通称として使用することまで許さないわけではなく、通称使用が広まることで不利益は緩和される。したがって、別姓を禁じた規定が故人の尊厳と男女の本質的平等に照らして合理性を欠く制度だと認めることはできず、自由意思による結婚や男女平等を定めた憲法24条には違反しない。

これらの判断は、いわゆる選択的夫婦別姓制度に合理性がないと断ずるものではない。この種の制度の在り方は、社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく、国会で論じられ、判断されるべきだ。規定を改廃する立法措置を取らない立法不作為は違法ではなく、賠償請求は認められない。

(2015年12月17日 日本経済新聞より)

最高裁の多数意見は、夫婦別姓を認めていない民法750条を「合憲」と判断したものの、夫婦別姓を認めるべきかどうかは国会での論じられるべきだという見解を示しています。

その一方で、女性裁判官3人を含む5人が「違憲」という意見を表明しています。女性の社会進出の推進や、仕事と家庭の両立策などによって「婚姻前から継続する社会生活」を送る女性が増加したのに伴い、「婚姻前の姓」を使用する合理性と必要性が増しているという意見や離婚や再婚の増加、非婚化、晩婚化、高齢化等により家族形態も多様化している現在において、氏が果たす家族の呼称という意義や機能をそれほどまでに重視することはできないとする意見も出ています。

また、通称は現在のところ公的な文書には使用できない場合がある上、通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を惹起することになるといった意見もあり、女性の活躍が昔に比べて飛躍する現代社会では、さまざまな考えがあるようです。国会での今後の動きに注目したいところです。