別居していた母を亡くし、「財産内容が分からないがどうしたらよいのか。」と、Aさんがご相談に来られました。
詳しくお話を伺うと、Aさんは、結婚を境にお母様とは20年以上別々に生活をしていました。
Aさんとお母様と、月に1度は電話で世間話はしても、財産の話などは全くしたことがありませんでした。
家の片付けも終わり、発見されたのは通帳3冊。
相談員は、それらの通帳の1行1行から振込先、入金先のすべてを一覧にし、取引相手をすべて調べていきました。
通帳の印字だけでは分からない取引先については、委任状を持参して銀行に行き、取引先の会社の正式名称等を確認しました。
それと同時進行で、Aさんに母様宛ての郵便物、ご自宅にある書類をできる限りセンターに持ってきて頂くよう依頼しました。
数回に分けてAさんが持ち込んだ書類は、段ボール数箱分となりました。
中身をまずは仕分けします。
①財産に関するもの、調べる必要のあるもの、
②広告等不要なもの、
③写真や手紙などの思い出の品。
その後①の連絡先を一覧にし、通帳の取引先とともにご逝去のご連絡をし、財産調査をしていきました。
すると、通帳の印字に『友の会』と書いてあるものがデパートの積立だということが分かり、積立金の数十万円を受け取っていただくことができました。
また複数の生命保険に加入していたことが、数年前の確定申告書から分かり、保険金請求をすることができました。
そしてAさんが賃貸だと思っていたお母様のマンションは、売買契約書がでてきたことでお母様の持ち物だということが判明しました。
また、一見財産とは関係ないと思われがちなDMや通販カタログにも逝去の連絡をすることで、有料カタログや定期購入商品を年払いで支払っている場合には返金をしてもらえることが分かりました。
手続完了時に、「Aさんは、『通帳しかないのに何にも分かるわけない』と本当は思っていたけれど、財産だけでなく、母がどんな暮らしをしていたのかまでもが分かった。本当に驚いた。」とお話されておられました。
それと同時に『私は息子が困らないように財産のことや、大切なものが隠してあるところを話しておかなくてはね』と言われていたのがとても印象的でした。
私たち相談員は、通帳や書類の中から財産を発見し、必要な相続の手続きをしていくことを得意としておりますが、Aさんが最後にお話しされていた通り、家族でのコミュニケーションがいかに大切かを日々実感しています。
そんな一番大切な『家族の絆』をAさんはお母様から『相続』されたのだと、うれしく思いました。