生涯独身を貫き、マスコミという華やかな職場で働き続けたAさんだったが、晩年に難病を発症する。親も亡くなり兄弟もいなかったAさんは、死期を悟り、病床で公正証書遺言を作成。その内容は、「遺産はすべて、途上国の子供のために寄付したい」というものだった。
Aさんは、仕事を通して、途上国の子供たちが日々、死と向かい合わせの生活を送っていることに心を痛めていた。Aさんの遺産は「億単位」にも及び、Aさんの死後、そのすべてがアフリカの子供たちのために使われた。
家族が居ても、亡くなるときには、一人という方もいる。医者一族の家系で育ったBさんには、医師の夫と息子が居たが、父親、息子、夫と亡くなり、彼らが蓄えた巨額の遺産がBさんに相続された。Bさんは、自分が結婚を反対したことで、息子を自殺させてしまったという贖罪の気持ちから、「医療が満足に受けられないアフリカの人々のために」と遺言に残し、世を去った。
日本ユニセフ協会によれば、AさんやBさんの寄付による受益者は数十万人にも上がるといい、計りしれない数の「命」が救われている。
(2013年2月4日 日経ビジネスオンラインより)
本当に相続人がいない「相続人不存在」の状態と家庭裁判所が認定した場合、「特別縁故者」といって、被相続人と一定の関係性がある人が裁判所に申し出て、遺産分与を主張することができます。ただ、相続人以外に財産分与をする遺言書があれば、話は別で、遺言書の内容に従わなければなりません。
相続人不存在によって国庫に納められた金額は、約261億7000万円にも上がるといいます。寄付する場合でも、相続人以外に遺贈する場合でも遺言書の効力は大きいので、少子高齢化や晩婚化によって、この数字がこれ以上膨れ上がらないよう、ぜひ「遺言書」を残していただきたいと思います。