子供のいない夫婦の妻が亡くなりました。夫は妻の病気により、認知症の症状が急速に進んでいきました。
今までなにかと夫婦の面倒をみてくれていた妻の姪は、血のつながりのある叔母が亡くなったこと、叔父の暴言がひどくなったことなどを理由に、叔父の世話をしなくなりました。
そのまま半年が過ぎ、金融機関から『毎日相続の手続に来るおじいさんがいるが、戸籍が集められないので手伝ってあげてほしい』と連絡があり、ご自宅にお伺いしました。
男性の一人暮らしにしては家のなかは片付いており、受け答えもしっかりとしています。
話を聞き、今までに取得した戸籍等をみると、妻の兄弟の戸籍が集められていないことがわかりました。携帯電話が鳴ったため、席をはずし、5分ほどしておじいさんのところに戻ってきたところ、『あんた誰だ?何の用事できてくれたのか?』と聞かれました。
そうです、おじいさんは認知症だったのです。
戸籍不足分の収集の承諾を得ることができなかったのですが、おじいさんの通帳や、お財布の中には数千円しか入っていません。今後、妻の財産が解約できないままいったら、おじいさんはどうやって生活していくのか?不安で仕方がありませんでした。
金融機関に連絡し、事情を説明すると、相続人の一人と連絡が取れるというではありませんか。
早速、金融機関から連絡を取ってもらい、その方に相続人の一人であること、相続手続をするためには、叔父に後見人を付ける必要があること、その申立人になってもらうことをお願いしました。
当初、彼女は叔父とかかわりあいを持つことを拒否しましたが、このままではおじいさんの生活がままならないことなどを根気よく話をし、後見人申立てと相続手続のお手伝いをしていただくことを了承していただきました。
結局、後見人がついたのが、妻の死亡から約1年後。この間のおじいさんの生活はなんと危険で不安なものだったでしょう。いまは後見人がついて、遺産分割協議もおわり、後見人が財産管理も身上監護もしてくれています。
こんな時、任意後見契約をしていたら、遺言書を書いていたら…と考えずにはいられませんでした。
子供のいないご夫婦は、事前の対策が必要なことを痛感しました。