清水花子さん(仮名)は、娘様夫婦と生まれて間もないお孫様と同居され、平穏な日々を送られていました。ある日、差出人が「×××法律事務所 弁護士○○○」となっている、心当たりの全く無いハガキが2枚ご自宅に届きました。宛名は、花子さんご本人と娘様になっています。ハガキを開いて目を通すと全く予期していない内容が書かれていました。
書かれていた内容とは、「清水太郎(仮名)殿は、携帯電話会社△△△に対し支払いがなされないまま、逝去なさいました。よって、清水太郎殿の法定相続人たる貴殿等に、その債務が法定相続分に応じて相続されておりますので、以下の通り請求させて頂きます。」ということでした。
清水太郎さんは、9年前に別居した花子さんの夫です。別居はしているのですが離婚はしていませんでした。太郎さんがお亡くなりになられたため、弁護士○○○が携帯電話会社の代理人となり、太郎さんの法定相続人である花子さんとその娘様に携帯使用料の未払い金の請求をしてきたのでした。
花子さんは、とても不安な気持ちに襲われました。なぜなら、太郎さんとの別居の原因の一つに太郎さんの借金癖があったからです。もしかして、大きな借金を残したまま太郎さんはお亡くなりになられ、花子さんとその娘様がその借金を相続しなければならないのではないか、そのような大きな不安を抱えてご相談に来られました。
「相続放棄をしたい」それが花子さんと娘様の思いでした。しかし、太郎様がお亡くなりになられたのが約半年前で、少し時間が経過しています。「相続放棄できるのでしょうか?」と尋ねられるご様子はとても不安そうでした。
相続人は相続があったことを「知った日から」3ヶ月以内であれば、相続放棄をすることができます。花子さんと娘様はハガキが届いて初めて太郎さんがお亡くなりになられたことを知り、すぐにご相談に来られましたので、相続放棄することができます。太郎さんの相続を知った原因(ハガキ)と時期を家庭裁判所に提出する書類に記入し、相続放棄の手続きを行いました。相続放棄の申立ては無事受理されました。
手続き後に花子様と娘様にお会いした際の、心底「ほっ」とされたご様子はとても印象的でした。